動画アノテーションのやり方は?メリットや手法、内製・外注する時の注意点を解説!
動画解析を実現するAIモデルでは、画像解析とは異なり、動画ならではの認識を可能とし、より広範囲でのAI活用を可能としています。例えば、自動運転において人間や自動車の動きを予測したり、監視カメラ等を通して人物の動きを解析することなどが可能になります。
実際に動画解析が可能なAIモデルは、小売、行政、基幹インフラ、交通、医療など多くの分野で活用をされています。
しかし、カメラ等を通して取得した動画データの利用には重要な前処理ステップ、すなわち動画アノテーションが必要です。動画アノテーションは、基本的には画像アノテーションの拡張であり、これには相当な労力と時間がかかります。では、このプロセスを効率的かつコスト効果的に実行するにはどうすればよいのでしょうか。
本記事では、アノテーションの基本的な定義から始め、その種類と手順を明らかにし、そしてどのようにして適切なツールを利用することでアノテーションプロセスのコストを削減できるのかについて詳しく解説します。動画アノテーションの外注を検討している経営者にとって、非常に価値のある記事です。
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1. 動画アノテーションとは
動画アノテーションとは、動画内の対象物にラベル付けすることを指します。
例えば、交通監視カメラの映像において、自動車、歩行者、自転車などを識別し、それぞれにラベルを付けることです。このラベル付けされた動画データを利用することで、AIモデルは動画の中の動きやパターンを学習することが可能になります。
動画アノテーションは、動いている物体を認識するモデルの学習に用いられ、防犯カメラや自動運転車のセンサー技術において重要な役割を果たします。例えば、防犯カメラの映像から不審な動きを検出したり、自動運転車が周囲の環境を理解して安全に運行するための情報を得ることができます。
動画アノテーション技術の高度化と低コスト化により、これまで人間が行っていた監視や安全確認のタスクを、AIモデルが効率的に代行することが可能となっています。
動画アノテーションと画像アノテーションの違い
動画アノテーションは画像アノテーションの延長上にあると考えられます。動画アノテーションと画像アノテーションの違いは、動画アノテーションは時間の経過と共に変化する情報を捉えることです。
動画アノテーションは、基本的に画像アノテーションの系列であり、各フレームでオブジェクトにラベルを付けることが含まれます。
また、連続する画像フレームを通じてオブジェクトの動きを追跡します。対象物の動きのパターンを学習するという点で、画像アノテーションよりも労力が増します。
しかし、動画アノテーションによって得られる連続するデータは、オブジェクトの動きや方向を理解するのに役立ち、これらのパターンを予測することには非常に価値があります。
単一画像方式と連続フレーム方式の違い
単一画像方式と連続フレーム方式の違いは、アノテーション作業の効率と精度に大きく影響します。単一画像方式は各フレームに個別にアノテーションを行うのに対し、連続フレーム方式は始点と終点のフレームのアノテーションから中間のフレームのアノテーションを自動生成します。
単一画像方式は、動画を構成する全てのフレーム(画像)にアノテーションを行う手法です。1秒あたりの動画のフレーム枚数は、fps(frames per second:1秒当たりのフレーム数)で表されます。5fpsであれば、1秒あたり5枚の画像が使われているという意味です。
一般的なカメラのフレームレートは15~60fps程度ですので、1分間の動画を単一画像方式でアノテーションするには、900~3600枚の画像にアノテーションをしなくてはなりません。これには、非常に大きな労力がかかりますが、各フレームを精確にアノテーション可能です。
一方、連続フレーム方式では、最初と最後のフレームにラベル付けすると、その間のフレームも自動的にラベル付けされます。時間と労力を節約できる一方で、物体の迅速な動きや変形に対応するのは難しい場合があります。
以下のように自社ケースを場合分けして、どちらを採用するか検討しましょう。
単一画像方式が向いているケース
・高い精度が求められる
・リソースと時間が豊富にある
・物体の動きの複雑さ: 複雑な動きや急激な変化がある
連続フレーム方式が向いているケース
・効率が重視される
・限られたリソースと時間の中で効率的に作業を進めたい
・シンプルな動き
2. 動画アノテーションで何ができるようになる?
動画アノテーションを通して構築した動画認識のAIモデルでは、以下のことが可能です。
① 業務自動化 ② 次の動作の予測 ③ リアルタイム処理 ④ 一部だけ写った物体の認識 |
①業務自動化
AIモデルは、動画アノテーションデータを学習することで、これまで人が行っていた業務を自動で行えるようになります。特に、異常検知や自動運転といった領域では、動画データから得られる洞察が不可欠です。
例えば、製造業における異常検知では、動画アノテーションデータを用いてAIモデルを訓練することで、製品の欠陥や生産ライン上の問題をリアルタイムで特定できます。
また、自動運転の分野では、動画アノテーションは車両が交通信号や標識を正確に認識し、適切な動作を行う能力を向上させるために重要です。動画アノテーションの精度が高ければ高いほど、これらのAIモデルはより正確かつ効果的に業務を実行できる可能性があります。
② 次の動作の予測
動画アノテーションは、人や物体の動作の予測におけるAIモデルの学習に非常に価値があります。アノテーションデータを利用することで、AIは人間や物体の動きのパターンを学び、将来の動きを予測できるようになります。
例えば、AIが危険な動きや犯罪活動の前兆を検出できるように訓練することで、リアルタイムで危険を警告し、事故や犯罪のリスクを軽減できます。これは、公共の安全や企業のセキュリティを強化する上で重要な要素となります。
③リアルタイム処理
あらかじめ検知したい動作を動画アノテーションで学習しておけば、リアルタイムでも解析や処理が可能です。リアルタイム処理は、AI技術の進化により、防犯や監視の領域で革命をもたらしています。
動画アノテーションを通じて訓練されたAIモデルは、リアルタイムでの動画分析を可能にし、防犯カメラやライブカメラの映像から異常や危険を即座に識別できます。この技術の応用が人間による監視を補完し、場合によっては置き換える可能性を持っています。
リアルタイム処理精度の向上により、安全性と信頼性が向上し、対応が迅速化されるでしょう。特に、厳重な監視が求められる高リスクな環境や、大規模な監視が困難なエリアでの応用が期待されています。
④一部だけ写った物体の認識
動画には、対象物がどのように移動したかの情報が含まれています。そのため、仮に動画内で対象物の一部が隠れたとしても、前後の情報から対象物の正体を認識できます。
これは、前後の情報が活用できる動画独自の長所であり、画像認識モデルにはない機能です。多くの対象物を認識できるため、より詳細な状況認識が可能になります。
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3. 動画アノテーションの種類
動画アノテーションは、画像アノテーションの連続であるため、以下のような画像アノテーションと同じ手法がよく用いられます。
・分類 ・バウンディングボックス(矩形) ・ポリゴン(多角形) ・セマンティックセグメンテーション ・ランドマーク |
分類では、その動画の状況を判断し、動画全体に対してラベル付けします。「天気」で分類するなら、晴、曇、雨などをラベル付けします。
バウンディングボックス(矩形)、ポリゴン(多角形)は、対象物を指定の枠で囲い、ラベル付けします。動画内で対象物の位置が変われば、それに応じて枠も移動させます。
セマンティックセグメンテーションは、動画を構成するフレームのピクセル単位にラベル付けします。全てのピクセルにラベリングするため大きな労力がかかりますが、高い精度のアノテーションが可能です。
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ランドマークは、対象物のキーポイントに対してラベル付けします。体格や顔など、個体によってキーポイントが変わる対象物の認識に良く用いられます。
4. なぜ動画アノテーションツール選びが重要?
アノテーション作業においてアノテーションツール選びが重要な理由は、アノテーションが自動でできるようになりつつあるものの、全てが自動ではないためです。
ツールは、あくまでアノテーションを効率的に行うための補助ツールなので性能が悪ければAIモデルの品質が落ち、使い勝手が悪ければ作業効率が落ちます。
ここでは、アノテーションツールを選ぶ際に見るべきポイントを解説します。
① 目的 ② アノテーション機能と操作性 ③ 作業管理 |
①目的
それぞれの動画アノテーションツールには、強みと弱みがあります。自社の目的に最も適したツールを選ぶようにしましょう。
例えば、バウンディングボックスを用いてアノテーションをするのに、ランドマークを強みにするツールを用いても、強みを最大限活かすことはできません。また、価格を抑えるために性能の低い無料のツールを選んだ結果、必要な品質に届かなければ、作業が全て無駄になってしまいます。
このような事態を避けるためにも、アノテーションをする目的と必要な精度を明確にするようにしてください。
②アノテーション機能と操作性
基本的な性能に加え、動画アノテーションを行う上で必要となる機能や操作性も見ておくべきです。以下に便利な機能をいくつか紹介します。
・フレーム補完
フレーム補完は、最初と最後のフレームにラベル付けすると、その間のフレームも自動的にラベル付けする機能です。これがあるだけでアノテーション作業が効率的になるため、非常に重要な機能です。
・コメント機能
コメント機能はアノテーションデータにコメントできる機能で、アノテーションの指示や仕様伝達、修正等に関する円滑なコミュニケーションを実現します。
・テスト
テスト機能は、アノテーション作業者が必要な技術を持っているかを測定できる機能です。
これらの機能が使いやすく設計されているかも確認しましょう。操作性が悪ければ、作業スピードが落ちてしまいます。効率を高めるためにも、操作性の良いアノテーションツールを選びましょう。
③作業管理
作業管理が素早くできれば、管理者の負担を軽くすることができます。アノテーションは、対象物の数やチェック体制によっては、工程が非常に多く複雑になります。
アノテーションツールに進捗確認やスケジュール管理機能がついていれば、管理状況を自動でまとめてくれるため、管理者の負担が減ります。スケジュール厳守の場合や、工程が多く複雑な場合は、作業管理しやすいツールを選ぶようにしてみてください。
5. 動画アノテーションはツールを使えば内製可能?
結論から言うと、データを正しく取り扱えて、ツールの使い方に熟達した専門的なスタッフがいるのならば内製可能と言えます。この理由を、品質面と価格面から解説します。
品質面
アノテーションの品質は、完成したAIモデルの性能に直結します。よって、高品質なアノテーションができるのであれば内製しても良いでしょう。
しかし、ツールを使っただけでは高品質なアノテーションができるようになりません。ツールは、あくまでアノテーションを効率的に行うための補助ツールです。
現段階ではツールより人の方が正確にアノテーションできます。加えて、品質に大きく影響するデータの選定は、人が行わなければなりません。
価格面
外注の方が高くなりそうなイメージを持たれがちですが、内製の方が高くなることもあります。確かに、外注するには依頼費用がかかりますが、内製の場合は以下の費用がかかります。
・ツール費 ・人件費 ・教育費 |
アノテーションには膨大な時間がかかります。多くの人員をアノテーション作業に割かなければならないため、人件費が必要です。また、作業前には教育も必要です。データに詳しい人がいなければ、AIモデルや機械学習の勉強も必要でしょう。
さらに、完成したAIモデルで求めていた性能が得られなければ、最悪の場合やり直しになることもあります。このように、アノテーションの内製にはリスクがあります。
対して外注した場合は、内製以上に費用はかかるものの、高品質なアノテーションデータが作業負担少なく手に入ります。その分、社員はコア業務に専念できるため、総合的に見るとプラスになるかもしれません。
企業によってどちらが有利になるかは異なりますので、自社には外注・内製どちらが適しているかを考えてみてください。
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6. まとめ
動画アノテーションでは、対象物の認識のほか、物体の動きやその向きまで認識できるので活用分野が格段に広がります。
しかしその分、多くのデータをアノテーションする必要があります。アノテーション作業を行う際には、可能な限り効率的に進められるよう、工夫できないかを考えるようにしてみてください。
また、コストを抑えるためにも、外注・内製を使い分けることも重要です。自社の状況に合わせて、最適な選択をするようにしてください。
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