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外観検査とは?手法・装置・運用方法・AIによる検査のメリットデメリットや注意点を解説!

作成者: 株式会社Nextremer|Oct 16, 2024 4:12:12 AM

 


製造業、インフラ管理など幅広い業界で品質管理に欠かせないのが外観検査です。従来では目視での検査が主流でしたが、近年ではAIベースの外観検査も活用されるようになり、より精度の高い自動検査が可能になっています。

この記事では、外観検査の手法やAIシステムのメリットデメリット、注意点を解説します。最後まで読んで頂ければ、外観検査で用いられるシステムや注意点をお分かりいただけます。

 

 

【目次】

  1. 外観検査とは
  2. 外観検査の2つの手法
  3. 外観検査のシステム種類
  4. AIによる外観検査のメリット・デメリット
  5. AIを外観検査に導入する際の注意点
  6. まとめ

 

 

 

1. 外観検査とは


外観検査とは、製品や部品に欠陥がないか表面をチェックし、品質を維持するための検査手法です。目視検査や自動化されたシステムを用いて、傷や汚れ、形状の異常などを検出します。

外観検査の目的は、製品や部品の外観における欠陥や不良を早期に発見することで、品質の維持と顧客満足度を高めることです。不良品が市場に流通し、企業のブランド価値や信頼を損なうリスクを回避するのに外観検査は欠かせません。

さらに、外観検査を通じて製造工程の不備や機械の異常を早期に発見することが可能で、生産ラインの効率性も向上させることが可能です。

そのため、外観検査システムの開発・導入は、企業の生産性や品質管理に直結する重要な意思決定となります。
外観検査における検査項目
外観検査における主な検査項目は以下です。製造している品物や企業ごとの基準によって細かい検査項目は異なりますが、これらの項目を検査することで問題のない製品を市場に送り出せます。

  • 形状
  • 構造
  • 寸法



形状

形状の外観検査では、製品が設計通りの形状を保っているか、以下のポイントを主に確認します。

  • 傷、汚れ
  • 歪み、変形
  • 異物の付着
  • 欠け、バリ
  • 色ムラ、変色
  • 印刷ミス
  • 包装や梱包の状態



形状は製品の見た目だけでなく機能性にも影響を与えるため、重要な検査項目です。特に複雑な形状を持つ製品では、微細な形状のズレが品質を左右します。



構造

構造の外観検査では、製品の部品が正しく組み立てられ、強度や耐久性に問題がないかをチェックします。組み立てや組み合わせの位置ずれがないかも検査が必要です。

構造上の不具合があると、製品の運送中、使用中に故障や破損につながるリスクがあるため、厳密な検査が必要です。



寸法

寸法の検査では、製品が設計図通りの寸法で製造されているかを測定します。寸法の誤差があると、製品の動作に支障をきたす可能性があるため、規格に合った精密な測定が求められます。




2. 外観検査の2つの手法

 

外観検査の手法には、主に以下の2種類があります。

  • 目視検査
  • 自動検査


それぞれについて解説します。


目視検査

目視検査は、作業員が目や手触りを使って直接製品を確認し、欠陥や異常を発見する外観検査手法です。

人の目による検査では、細かい傷や微妙な色の変化、異物の付着など、機械では捉えにくい部分を見つけるのに優れています。また、製品ごとに異なる検査基準にも柔軟に対応可能です。

しかし、目視検査には限界があります。目視検査の精度は作業員の疲労や経験に左右されるため、検査の精度や一貫性にばらつきが生じることがあります。

そのため、大量生産や高精度が求められる製品では、目視検査のみで品質を維持するのが難しくなるため、自動検査と組み合わせて使われることが多いです。

 

自動検査

自動検査は、機械やAI技術を利用して自動的に検査する手法です。カメラやセンサーを用いて製品や設備の画像を取得し、設定された基準に基づいて欠陥や異常を検出します。

自動検査は短時間で大量の製品を検査できるため、特に大量生産において効率的です。また、検査の精度や一貫性が高く、人の疲労や主観によって検査精度がばらつくことはありません。

人間の目では見逃してしまうような微細な欠陥や寸法のズレであっても、高精度で検出できる自動検査システムを開発可能なため、高品質が求められる製品や複雑な形状の部品に適しています。

ただし、自動検査の検査内容は事前に設定された検査ルールに限定されますし、AIも基本的には学習した範囲以外の内容は検査できません。また、多品種少量生産への対応には、システムの調整や複数のシステム導入が必要になる場合があります。

 

 

3. 外観検査のシステム種類

 

外観検査では、目的や精度によって適切なシステムが異なります。外観検査のシステムには、以下のような種類があります。

  • 卓上型
  • 半自動
  • 自動型
  • オフライン
  • インライン
  • AIベースの検査システム
  • 3D検査システム
  • モバイル検査装置



それぞれについて解説します。それぞれの装置は、独自の利点を活かして1つのラインの中で併用して使われることも少なくありません。



卓上型

卓上型の外観検査システムは、コンパクトで省スペースな検査ユニットを使用する手法です。オペレータが製品(検査対象物)を手でセットして検査を行います。

小規模な生産ラインや検査の簡便化を求める現場で活用されます。テーブルや作業台に設置するだけで使用できるため、導入が容易です。

シンプルな構造で操作も比較的容易なため、初期費用を抑えつつ、一定の精度で検査を行うことが可能です。



半自動

半自動の外観検査システムは、人間による作業と機械の自動化を組み合わせたシステムです。オペレーターが製品をセットすると、装置が自動的に回転や照明の制御を行います。そして、検査はオペレーターが目視で行います。一部の検査や結果の記録などはシステム側で行う場合もあります。

完全手動による目視検査よりも効率を高めつつ、完全自動化よりも柔軟に対応することが可能です。製品の種類が多様で、手動での調整や検査の柔軟性が求められる場合に適しています。



自動型

自動型の外観検査システムは、完全に機械化されたシステムで、製品の検査から判定までの一連の工程を全て自動で行います。自動化することで高速かつ正確に大量の製品を検査することが可能で、24時間動いているような大規模生産ラインや、精密な外観検査に適しています。

自動型ではカメラやセンサー、画像処理技術やAIを組み合わせることで、目視では見逃されがちな微細な欠陥や寸法のズレも確実に検出することが可能です。

特に、AIを活用したシステムでは複雑なパターン認識も可能で、目視検査よりもはるかに高い精度が出ることが少なくありません。また、人的ミスや検査員による判断のばらつきを排除できるため、検査品質の一貫性を確保できます。
オフライン
オフラインの外観検査とは、生産ラインとは別の場所に検査装置を設置して製品を検査する手法です。製品を一旦ラインから取り外し、専用の検査機器で外観検査を行います。後述のインライン外観検査と対照をなすシステム種類です。

目視検査を使うケースが多く、検査専用スペースで検査を行うため、じっくりと詳細な検査ができるのがメリットです。



インライン

インラインの外観検査とは、生産ライン内で外観検査を実施する手法です。生産ラインに合わせて検査装置が設計されており、製造の流れを止めることなく検査を実施できます。全数検査を実現することも比較的容易です。

インライン検査では生産ラインのスムーズな流れを保てるので、リアルタイムで不良品を検出することが可能です。



AIベースの検査システム

AIベースの検査システムでは、AIの画像認識技術を活用して外観検査を自動化し、高い精度と効率を実現する手法です。

ディープラーニング技術を活用することで膨大な画像データを学習し、微細な欠陥や規則性を認識する高い検査能力を持つことが可能です。そのため、従来の検査システムでは検出しにくい不良品や異常も正確に検出できます。

また、AIは外観検査で取得した画像データを学習し、検査精度を向上させることが可能です。長期的に運用すればするほど生産性を大幅に向上させ、品質の均一性を高めることも期待できます。

ただし、AI学習時に、不良品や異常についての十分な学習データをどれほど確保できるかで精度が大きく左右されます。また、適切なハードウェア(カメラ、照明など)の選択も重要です。



3D検査システム

3D検査システムは、製品や部品を立体的に検査する技術です。3Dカメラやセンサーを使用して製品の形状データを取得します。

従来の2D検査では平面的な情報しか得られないため、奥行きや複雑な形状を検査できない可能性がありました。3D検査では製品の全体像を把握し、形状のズレや表面の凹凸まで詳細に、しかも同時に検出可能です。特にAIと組み合わせることで、複雑なパターン認識も行えます。


モバイル検査装置

モバイル検査装置とは、IoTセンサやカメラを搭載したバッテリ駆動で持ち運び可能な外観検査システムです。

工場内外で簡単に移動して使用できるため、ライン変更や製品ごとに検査を行う必要がある場合に効果的です。特に、小規模な生産ラインや頻繁に検査場所を変更する必要がある現場で重宝されます。

また、最近は小型の高精度センサーや赤外線カメラも搭載しており、場所を問わず高品質な外観検査を行うことが可能です。また、一部の装置はAI技術を活用しており、より高度な分析をその場で行うことができます。

 


4. AIによる外観検査のメリット・デメリット

 

近年は外観検査にAIを活用することが増えてきました。

しかし、AIを導入するには技術面・費用面において考慮しなければいけません。ここでは、外観検査にAIを活用するメリットとデメリットについて解説します。


AIによる外観検査のメリット

AIによる外観検査のメリットには以下があります。

  • 効率と精度を大幅に向上
  • 柔軟な対応
  • 24時間連続稼働可能



AIによる外観検査のメリットは、検査の効率と精度を大幅に向上させる点にあります。膨大な画像データを学習し、細かい欠陥や異常を従来の手法よりも高精度に検出できるため、人の目では見逃しやすい箇所も確実に検出できます。

また、検査のスピードも向上し、大量の製品を短時間で検査することが可能です。

加えて、AIによる外観検査は、従来のルールベースの画像処理技術の厳密さと人間による目視検査の柔軟さを併せ持っています。

従来の画像センサーによる外観検査は、OKかNGかの線引きの厳密性が低く、いわゆるグレーゾーンと呼ばれる領域の検査は不得意でした。一方、AIは、グレーゾーンと呼ばれる状況でも、人間の目視検査に近い柔軟な判断が可能です。

さらに、AI検査は24時間連続での稼働も可能で、作業者の疲労や感覚的なばらつきによるミスを減らすことに貢献するため、品質管理の一貫性が向上します。結果として、生産コストの削減にもつながります。


AIによる外観検査のデメリット

AIによる外観検査には、以下のデメリットがあります。

  • 導入コスト
  • 学習データの質と量を確保する必要
  • 新しい欠陥パターンでは再学習が必要


長期の実用に耐えるAIベースのシステムを構築するには、高性能なハードウェアやソフトウェア、そして大量の学習データが必要となります。これらを用意するには、導入時に大きな投資が必要です。

長期的な運用コストや投資回収期間(ROI)を事前に綿密に検討しましょう。

さらに、AIの性能は学習データの量だけでなく、質にも依存するため、適切なデータを用意しなければ検査精度が低下するリスクがあります。また、データの収集やアノテーションを含むデータの準備には専門的な知識が求められ、運用開始までに時間がかかることもデメリットとなり得ます。

また、「AIであれば万能」ではありません。AIは学習したデータに基づいて判断するため、学習データに含まれていない全く新しい種類の欠陥を正確に検出できない可能性があります。新しい欠陥パターンや製造環境の変化に適応するために、追加の学習データやシステムの再調整が必要になる可能性についても検討が必要です。

 

 

5. AIを外観検査に導入する際の注意点

 

AIを外観検査に導入する際には、以下の点に注意しなければいけません。

  1. 検査内容の適合性
  2. 画像認識におけるアノテーションの精度
  3. 他社の事例調査
  4. 内製か外注か


それぞれについて解説します。


検査内容の適合性

外観検査でAIシステムを機能させるには、検査対象となる製品や部品の欠陥や異常のパターンが定義されており、それに対応する適切なデータで学習していることが必要です。そのため、事前に検査項目とAIの検査性能が合致しているかを確認することが不可欠です。

例えば、導入するAIの判断が企業の品質基準や業界規格と乖離しているなら、不適切な合格/不合格判定が行われてしまいます。また、生産ラインの速度に対して処理速度の遅いAIモデルを導入するなら、検査がボトルネックとなり生産効率が低下するでしょう。

検査内容との適合性を確認せずに導入すると、期待される品質管理が達成できず、逆にコストや工数が増加する可能性があります。


画像認識におけるアノテーションの精度

外観検査に用いられる画像認識におけるアノテーションとは、画像データにラベル付けをする作業です。学習に用いる画像データに「正常」、「欠陥あり」、または欠陥の「種類」や「程度」や「位置」などのラベルを付与します。

アノテーションが不正確であったり、曖昧な基準で行われると、AIが誤った判断を下し、検査精度が低下するリスクが高まります。そのため、画像認識におけるアノテーションの品質を確保することが、AIシステムの精度向上には欠かせません。

画像認識分野でも自動アノテーションの技術が進んできています。それでも、人の目と手を使った手動アノテーションの柔軟性と精度には遠く及ばないのが現状です。

高精度のアノテーションを行う、そして維持するためには、欠陥や異常の定義や分類基準を詳細に文書化し、アノテーター間で共有することが必要です。また、複数のアノテーターによる相互チェックを行い、個人の主観や誤りを排除します。

製造プロセスや欠陥の種類が多様化する場合は、定期的なデータの更新や検証によってアノテーション品質を維持することも重要です。

画像アノテーションの方法、手順については:「画像アノテーションのやり方は?手法や手順・注意点・外注か内製かについて徹底解説!」 を併せてご覧ください。






同業他社の事例を十分に調査

同業他社の事例を調査することで、自社と類似した製品や製造プロセスにおける特有の課題や困難点を事前に把握できます。これにより、自社での外観検査のAI導入時に起こりうる問題を予測し、対策を立てやすくなります。

他社の事例を調査する際には、成功事例と同等以上に失敗事例の収集が重要になります。成功事例を分析することで、効果的な導入方法や運用のベストプラクティスを学ぶことができます。

そして、他社の失敗事例を研究することで、同じ過ちを繰り返すリスクを低減できます。失敗の原因を分析し、自社での導入計画に反映させることで、より堅実な計画を立てられます。



内製か外注か

AIを活用した外観検査システムの開発・導入において、内製か外注かを選択しなければいけません。

内製の場合、自社でAIの外観検査システム開発から運用まで一貫して行うため、最適化されたシステムを構築することが可能です。自社の製造プロセスのみに特化したシステムを運用できます。

しかし、AI技術やアノテーションの専門知識を社内に持っている必要があり、初期コストや人材育成に時間と労力がかかるデメリットがあります。

一方、外注の場合は、専門業者の知識と技術を活用できるため、短期間で高精度なシステムを導入できるのがメリットです。特にAIに関するノウハウを持っていない企業にとっては、自社では実現できないシステムを構築できます。

前述のアノテーション作業の部分を含めて、自社内でできること、できないことを詳細にリストアップしましょう。自社の状況によっては、初期は外注で開始し、徐々に内製化していくハイブリッドアプローチも有効な選択肢となり得ます。




6. まとめ

外観検査にAIを活用することで、効率的で正確な検査が可能になります。外観検査の品質を高めたい、自動検査システムを導入したい企業の方は、AIをベースにしてみてはいかがでしょうか。

外観検査に用いるAIモデルを高性能にするには、アノテーションが重要です。アノテーションの実施やクオリティに不安がある方は、アノテーション専門会社に相談してみるのも検討しましょう。