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音声認識とは?仕組み・機能・AIシステム開発手順・事例・注意点を解説!

作成者: 株式会社Nextremer|Dec 16, 2024 5:12:37 AM

 


従来の音声認識システムは限られた単語や簡単な指示しか理解できませんでした。しかし、AI(人工知能)技術の進化、特にディープラーニングの導入によって飛躍的に精度が向上し、近年は、自然な会話や複雑な発話も高精度で認識できるようになっています。

しかし、「音声認識とは具体的にどのような仕組みで動いているのか」「ビジネスのどのような場面で活用できるのか」といった疑問があり、導入を先送りにしている方もいるでしょう。

本記事では、音声認識の仕組みや主要な機能といった基本のほかに、活用メリットや最新の活用事例について詳しく解説します。

記事の後半では、音声認識AIを開発するための手順や導入時の注意点についても紹介しているので、音声認識の利用開始までの流れを理解し、実際の活用に役立てていただける内容となっています。

 

 

 

【目次】

  1. 音声認識とは?
  2. AIによる音声認識の活用メリット
  3. 音声認識の活用事例
  4. 音声認識AIモデルの構築方法
  5. AIモデルの構築
  6. 音声認識AIシステムを構築する際の注意点
  7. まとめ

 

 

1. 音声認識とは?


音声認識とは、コンピュータが人間の発した音声を解析し、その内容をテキストデータに変換する技術です。SiriやGoogleアシスタントといったスマートフォンの音声入力機能で一気に日常生活でも認知されました。

近年ではChatGPTをはじめとする生成AIを使った活用が進んでおり、音声を通じてAIに対して指示出しや対話、会話からテキストへの書き起こし、要約など新しい活用方法も見られます。

このように、生成AIとの連携により、音声認識技術は単なる音声入力の枠を超え、さらに高度かつ柔軟なインターフェースとして発展を続けています。

 

仕組み

音声認識は、以下4つのステップで認識される仕組みです。

  1. 音響分析(特徴量抽出)
  2. 音響モデル
  3. 発音辞書
  4. 言語モデル

入力された音声はまずデジタルデータに変換されます。そして、AIの学習に使うための特徴量が抽出されます。

最新のディープラーニングモデルでは、wav2vecのような生の音声波形から直接学習する技術も登場しており、従来の特徴抽出プロセスを省略できる場合もあります。

次に、抽出された特徴量から、モデルが母音や子音など言語の最小単位である「音素」を特定します。音声の連続性を保持しながら、精度高く音素を特定することが可能です。

続いて、発音辞書(音素と単語を結びつけるためのデータベース)で、特定された音素がどの単語に対応するかを判断します。

最後に、大量のテキストデータから学習した統計的情報をもとに、単語同士の関係性を考慮し、自然な文章として出力します。近年は、BERTやGPTをはじめとするTransformerベースのLLM(大規模言語モデル)の利用が増えています。

ディープラーニング技術の進化により、従来は個別に処理されていた上記のプロセスが統合されつつあります。また、エンドツーエンドのモデルが登場したことで、音声から直接テキストへの変換が可能になり、音声認識技術のさらなる精度向上に寄与しています。

 

活用シーン

音声認識は、日常生活からビジネスまで幅広い分野で活用されています。以下は、代表的な活用シーンの一部です。

  • 議事録作成
  • 自動翻訳・通訳
  • 音声データのテキスト化
  • ボイスボット

ディープラーニング技術の発展に伴い、今後さまざまな分野での応用が期待されています。




2. AIによる音声認識の活用メリット

 

AIを活用した音声認識技術は、業務効率の向上や提供サービスの高度化などで大きく貢献しています。以下では、AIによる音声認識を活用するメリットについて紹介します。


業務効率化

音声認識を活用すれば、従来の手入力が不要となり、データ入力やドキュメント作成などの作業が大幅に迅速化されます。例えば、報告書や顧客対応履歴の作成において短時間で多くの情報を記録できるため、日々の業務負担が軽減され、生産性も向上します。

また、音声認識を活用することで、手入力による誤りを少なくできます。これにより、書類の作成から承認に至るまでの一連のプロセスが効率的になり、内容の確認や修正に費やす時間を削減できます。

顧客サポートや会議録作成のように膨大なテキスト入力が求められる場面でも、音声認識技術は有効です。リアルタイムで発言内容を記録できるため、迅速な応対が可能となり即時情報共有も実現します。


アクセシビリティの向上

音声認識技術は、視覚障がい者や手の不自由な方でもデバイスやアプリを音声で操作できる環境を提供します。声だけでスマートフォンやパソコンの各種操作が可能となり、アクセシビリティが大幅に向上します。

そのため、音声認識を利用することで、多様なユーザーにとって使いやすいサービスを提供でき、顧客満足度の向上にもつながります。

 

リアルタイムでの情報収集

音声認識技術は、音声データをリアルタイムで分析し、重要なインサイトを瞬時に抽出することが可能です。

例えば、カスタマーサポートや営業の現場において音声認識を活用することで、顧客が発するニーズや不満点を早期に把握でき、素早い対応が可能になります。問題が発生した際に迅速に対応できるため、顧客満足度の低下やクレーム拡大の防止につながります。

また、音声データから得られるインサイトは、顧客の期待や関心を理解する感情分析にも役立ちます。音声認識によって顧客との間接的なコミュニケーションを強化し、ビジネスにおける意思決定の迅速化を促進する手段となります。



3.音声認識の活用事例


音声認識は議事録の作成や取材データの文字起こしなど、さまざまなビジネスシーンで活用が進められています。以下では、音声認識の活用事例を紹介します。

 

議事録作成時間を半減(井村屋)

井村屋グループでは、議事録の作成に一週間近くかかることが課題でした。従来の方法では、会議録音の特定部分を探したり、同じ部分を繰り返し聞き返す必要があるため、時間がかかっていたのです。

そこで、Rimo合同会社の開発した音声認識AIシステムを導入することで、議事録作成が従来の倍速で可能になり、作業時間が大幅に短縮されました。これにより、従業員は議事録作成の負担から解放され、業務効率の向上のほか、ストレス軽減につながりました。

参考:https://rimo.app/case-studies/Z24aLo4BOZW2yZ8QzC8d

 

難聴者が気軽に対話できる体制確立(取手市)

高齢化率が30%を超える茨城県の取手市では、聴覚障がい者や難聴者が気軽にコミュニケーションを取れる環境の整備が課題となっていました。

そこで、取手市議会事務局は株式会社アドバンスト・メディア開発の音声認識AIシステムの活用を決定しました。導入した音声認識システムには、別画面上でテキストを表示する字幕ポップアップ機能があり、リアルタイムで会話内容を字幕として表示する仕組みです。

これにより、相談に訪れるさまざまな方に対して、明確でわかりやすい説明を提供できるようになっています。

参考:https://voxt-one.advanced-media.co.jp/case/5307/

 

 

4. 音声認識AIモデルの構築方法


音声認識AIモデルはいくつか段取りを踏むことで、信頼性の高いモデルを開発できます。以下では、音声認識AIモデルを構築する方法について紹介します。


導入目的の明確化と要件定義

まず、導入目的を明確にし、具体的な要件を定義することが重要です。以下を把握することがポイントです。

  • どの業務で音声認識を活用するのか
  • どんな課題があり、音声認識がどのように解決できるか
  • 導入目的が決まれば、音声認識が満たすべき以下に挙げるような技術要件を定義します。
  • 必要な認識精度
  • 対応する言語の種類
  • 求められる処理速度

処理速度については、先に挙げた精度や言語種類数とのトレードオフになることが少なくありません。また、導入にあたっては予算や導入スケジュールの設定も重要です。


データ収集・前処理

音声認識モデルの精度を高めるには、質の高いデータ収集と、的確なデータ前処理が必要です。音声認識は多様な発話パターンを利用することで、より精度の高いモデルを構築できます。

収集した音声データには、以下のような前処理が必要です。

  • ノイズ除去
  • サンプリング
  • 音量の正規化
  • 時間軸のスケーリング

上記の処理によって、音声信号の一貫性が保たれ、モデルが正確に音声を認識できるようになります。また、使用するAIモデルに適した形式にデータを変換する前処理も一般的です。

 

アノテーション

音声認識モデルを構築したり、精度を向上させるためには、収集した音声データに対して正確なアノテーションを施すことが不可欠です。

アノテーションでは、まず音声データを正確に文字起こしし、必要に応じて音素レベルでのラベリングを行います。音素レベルでのラベリングは、音声を細かく分解し、発音単位をモデルが認識できるようにするために役立ちます。

正確なアノテーションは、モデルの学習に使用される教師データの質、ひいては音声認識モデルの精度に直接つながります。




5. AIモデルの構築


AIの音声認識モデルには、以下のように定番と言えるアーキテクチャがいくつかあり、それぞれの特性に応じて選ぶ必要があります。

  • Conformer:CNNとTransformerを組み合わせたモデルで、現在最も高性能な音声認識モデルの一つ
  • RNN-T:リアルタイム音声認識に適しており、Conformerと組み合わせて使用されることが多い
  • CNN(畳み込みニューラルネットワーク):音声信号の特徴を捉えるために使用されることがあり、前処理としてよく利用される
  • Transformer:シーケンス処理に優れ、長距離の依存関係を効果的に捉えることができます

上記のモデルを構築し、大量のデータを用いてトレーニングします。

そしてトレーニング後にはモデルの性能を評価し、必要に応じて精度向上のためにハイパーパラメータの調整、データの追加などの改善施策を行います。


6. 音声認識AIシステムを構築する際の注意点


実用的な音声認識AIシステムを構築する際には、データの取り扱いなどでいくつか注意点があります。以下では、特に注意すべき事項を紹介します。

データプライバシーを考慮する

音声認識技術を導入する際にはユーザーの音声データが収集されるため、個人情報保護が不可欠です。保存方法やアクセス権限を適切に管理し、匿名化処理が施されているかを確認する必要があります。

また、データの暗号化やユーザーからの明確な同意を取得する場合は、個人情報保護法をはじめプライバシー法への準拠も考慮すべきです。これらの措置により、ユーザーの個人情報を保護しつつ、信頼性の高い音声認識システムを提供できます。

 

質の高い音声データを用意する

高精度な音声認識モデルの構築には、質の高い音声データをトレーニングに使用することが重要です。トレーニングデータが不十分な場合や偏りがある場合には、モデルにバイアスがかかり、誤認識の原因となる可能性があるからです。
データ収集に関する注意点についてはこちらの記事も併せてご覧ください。

特に、特定のアクセントや音声特性に対しては認識が難しくなる傾向があります。活用目的から鑑みて必要であれば、方言や独特な表現が含まれるバランスの取れたデータセットを用意することで、広範囲のユーザーに対応できるモデルを構築可能です。

 

誤認識のリスク

高精度な音声認識技術であっても、以下に挙げるようなさまざまな原因により誤認識のリスクが伴います。

  • 背景の雑音・騒がしい環境
  • 話者のアクセント
  • 声のトーン・速度、地域ごとの方言や発音の違い

音声認識における誤認識のリスクを軽減するためには、ユーザーが音声認識結果をすぐに確認・訂正できるインターフェースや、複数の確認ステップの導入が効果的です。

また、特に重要な市場では特化型の音声認識モデルを開発し、市場の特性に応じて最適化することで、市場の言語特性に合わせた高精度な認識が可能になります。

 

 

7.まとめ

音声認識技術は、顧客体験の向上や業務効率化を図るために、多くのビジネスシーンで欠かせない存在となっています。顧客とのコミュニケーションの円滑化やリアルタイムでの情報収集、議事録の自動作成など、さまざまな用途で活用され、業務のスピードと精度を高めています。

また、働き方改革が推進される現代において、社員の業務負担を軽減し、業務効率や生産性を向上させるための重要なツールでもあります。音声認識技術の導入により、日々の業務が迅速に処理され、従業員がより重要な業務に集中できる環境が整います。

今後も、音声認識技術は、より多様なニーズに応えつつ、企業にとって価値の高いツールとして発展していくことでしょう。