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感情分析とは?仕組み・手法・AI搭載のメリット・事例・注意点を解説!

作成者: 株式会社Nextremer|Dec 16, 2024 5:12:54 AM

 


感情分析は、テキストや音声、表情などのデータから人々の感情や意見を読み取る技術です。

近年は、AI(人工知能)を搭載した感情分析システムが増え、従来より高性能かつスピーディな分析が可能になりつつあります。

本記事では、感情分析の仕組みや手法などの基本のほかに、ビジネスでの活用メリットや実際の事例、導入における注意点について網羅的に解説します。

感情分析の導入価値を理解できる内容となっています。

 

 

【目次】

  1. 感情分析とは?
  2. 【種類別】感情分析の仕組み
  3. 感情分析AIが企業にもたらすメリット
  4. 感情分析システムの活用事例
  5. 感情分析AIを活用する際の注意点
  6. まとめ

 

 

1. 感情分析とは?


感情分析とは、AIを用いてテキストや音声、表情などのデータから人間の喜怒哀楽などの感情や気持ちの変化を解析する技術です。

AI技術の進歩に伴い、大量のデータを効率的に処理できるようになり、感情分析技術の精度向上につながっています。精度向上に伴い、マーケティングやカスタマーサポート、医療や教育、エンターテインメント分野など多岐にわたる分野で応用されています。


分析アプローチ・手法

感情分析の手法は、大きく「ルールベースのアプローチ」と「AIによるアプローチ」の2つに分けられます。

ルールベースのアプローチとは、事前に定められたルールをもとに、特定の単語や表現から感情を推定する方法です。例えば、ポジティブな単語とネガティブな単語のリストを用いて、テキストを評価します。

ルールベースのアプローチは、特定の感情を表すキーワード検出の際に有効です。しかし、ニュアンスや文脈を読み取るのは苦手です。なので、感情が複雑に絡み合う場合や、皮肉表現の理解には限界があります。

一方、AIによるアプローチでは、以下のような多種データを、それぞれの分野に特化したAIが学習します。データからパターンや規則性を見つけ出し、感情を推定する方法です。


AIによるアプローチは、データ量が増えるほど精度が向上し、多様な感情を迅速に解析することが可能となります。

ルールベースのアプローチとAIによるアプローチは、それぞれにメリットと課題があるため、使用するデータや求める精度に応じて適切な手法を選ぶ必要があります。

 

 

2. 【種類別】感情分析の仕組み

 

感情分析は、分析対象のデータによって仕組みが異なります。以下では、音声・テキストデータ・顔の表情・生体情報に分けて仕組みを紹介します。

 

音声

音声データを利用した感情分析では、特定の言語に依存せず話し方の特徴に注目します。例えば、「声の抑揚」「声の大きさ」といった特徴量を分析し、感情を認識する仕組みです。

例えば、同じ言葉であっても、声のトーンが明るければポジティブな感情、低くゆっくりしたトーンであればネガティブな感情と推測します。

音声データを用いた感情分析は、国や文化を超えて幅広い感情データの分析が可能です。そのため、特にカスタマーサポートやコールセンターでの活用が進んでいます。

 

テキストデータ

テキストデータを用いた感情分析では、主に自然言語処理の技術を使用します。入力した文章(テキスト)の中の単語やフレーズをAIが読み取り、内容を分析することで感情を判断する仕組みです。

例えば、商品レビューやSNSの投稿文をAIが読み取り、「好き」「不満」などの単語を検出することで、投稿者の感情傾向を判断します。

顧客のフィードバック分析やソーシャルメディア分析などで多く利用されており、企業がユーザーのニーズや意見を理解するために活用されています。

 

顔の表情

顔の表情を利用した感情分析は、人間が普段のコミュニケーションで行っているように、顔の表情の動きから相手の感情を読み取る仕組みです。AIにより、画像やビデオデータから顔の筋肉の動きや目の動き、口元の変化といった微細な表情の動きを解析します。

顔の表情に基づく感情分析は、カメラや表情認識ソフトウェアを組み合わせてリアルタイムで分析できます。特にエンターテインメント分野や接客業での顧客満足度の分析に役立ちます。

 

生体情報

生体情報からの感情分析は、脈拍や発汗、脳波など身体の生理的な反応をセンサーで測定し、そのデータをもとに感情を推定する仕組みです。

例えば、多くの人は緊張やストレスを感じると心拍数が上がり、手に汗をかきます。これらのデータをセンサーで採取し「緊張」や「不安」といった感情を推測可能です。また、脳波センサーを用いることで、脳の活動パターンから感情状態を判断する技術もあります。

生体情報は、顔や声などの外見には表れにくい兆候の把握が可能です。そのため、特に医療分野で患者のストレスレベルや精神状態をリアルタイムでモニタリングする手段として注目されています。




3. 感情分析AIが企業にもたらすメリット

 

感情分析AIは、企業のマーケティング活動や職場環境などにおいて大きなメリットをもたらします。以下では、感情分析AIが企業にもたらすメリットを紹介します。

 

リアルタイム対応でユーザーの満足度が向上する

感情分析AIは、問い合わせ時におけるユーザーの満足度向上に貢献します。

例えば、コールセンターでの通話内容や顧客の表情をリアルタイムで解析することで、オペレーターが顧客の感情状態を把握し、より適切な対応が可能になります。もし、通話中に顧客の声のトーンが低くなったこと、チャットで不満を示すワードが増えたことを検知して迅速なフォローアップが行えます。

このように、感情分析AIを通じてトラブルシューティングの速度を上げるだけでなく、顧客との良好な関係構築につながります。


マーケティング戦略に役立てられる

感情分析AIを使ってSNSやレビューサイトの投稿から消費者の感情や意見を分析することで、顧客のニーズや要望に基づいた商品開発やマーケティングが可能です。

また、AIによる感情分析は、特定の感情と消費行動の関連性を可視化する手段としても注目されています。消費者がどのような感情の動きをした場合に購買などのアクションを取りやすいかを把握できれば、マーケティングや営業活動の改善に役立てられます。

 

職場環境の改善に寄与する

感情分析AIは、職場環境の改善にも大きく貢献します。従業員の感情をモニタリングすることで、日々の業務におけるストレスや不満の兆候を早期に察知でき、迅速に対策を講じることが可能です。

例えば、定期的なアンケートやチャットの内容から従業員の感情傾向を分析し、疲労や不満が蓄積している部署や業務を特定できます。これにより、上司や人事部はプライバシーを守りつつも、的確なサポートや改善策を打ち出しやすくなります。

感情分析AIを活用することで、従業員の満足度向上や心理的なケアが行いやすくなり、離職率の低減や職場のモチベーション向上にもつながります。

 


4. 感情分析システムの活用事例

 

感情分析システムは、実際に企業のマーケティング活動やサービス向上のために活用され、有効性が確かめられています。以下では、感情分析システムの活用事例を紹介します。


ビール消費者の選択行動の暗黙的測定に活用(アサヒグループ)

アサヒグループであるアサヒクオリティーアンドイノベーションは、感情分析ツールを用いて、ビール消費者の選択行動に関する実証研究を行いました。

従来、テイスターとなった消費者が口に出したり、アンケートに記入した意見や好みに基づいてビール商品の開発を行っていました。しかし、実際に消費者が思っていることや無意識に示す反応とは一致しない場合も多くあります。

そこで、感情分析ツールを用いてビール試飲中の消費者の表情をリアルタイムで測定し、製品に対する反応を把握する試みが行われました。

実証研究では、消費者が試飲後に行う「唇を押さえつける」表情がビールの選択を予測する有効な指標であることも示唆されました。

今後、感情分析ツールでより多くの表情を分析することで、商品に対する消費者の無意識かつ本質的な反応を把握できると期待されています。


参考:https://www.affectiva.jp/affectiva-topics/aqi


マスク着用時の表情分析を実現(KDDI)

KDDIは、マスクを着用していても表情を認識できる「表情認識AI技術」を開発しました。マスク着用時には顔の70%ほどが覆われてしまい、従来の表情認識技術で重要な唇や口角、頬といった鼻から下の動きを把握することが難しくなります。

この課題を克服するため、KDDIは50種類以上のマスクを用意し、数百におよぶマスク着用画像をAIの学習データに取り込みました。開発当初、この技術の認識精度は60%ほどでしたが、データを拡充させることで、最終的には90%以上の精度を実現しました。

今後、動物園や水族館、遊園地などで来場者の反応を確認するツールとしての利用が見込まれています。また、オンライン会議において、マスクを着用した参加者の反応を可視化する際にも役立つと期待されています。


参考:https://time-space.kddi.com/au-kddi/20210611/3122.html

 

英語オンラインレッスン講師の指導品質向上(ベネッセ)

ベネッセコーポレーションは、通信教育「進研ゼミ」の英語オプション教材「オンラインスピーキング」に表情・感情認識AIを活用したシステムを導入しました。

この教材は初めて外国人と英会話をするケースも多い未就学児~中高生が対象です。そのため、講師の雰囲気や接し方が学習効果や満足度に大きく影響を与えます。

そこで、講師の指導テクニックの向上を目指し、講師の表情やジェスチャーをリアルタイムで解析できる表情・感情認識AIを取り入れたのです。

このシステムでは、子ども向けレッスンにおいて特に重要な指標となる「笑顔」などの要素を基準化し、AIで全レッスン映像をリアルタイムに解析します。そして、レッスンが終了すると、講師自身の表情やジェスチャーの頻度などがわかるレポートが送信されます。

表情・感情認識AIを通じて、講師自身が指導スタイルを適宜確認し、子どもへの接し方を改善できるようにすることでレッスンの品質向上を目指しています。


参考:https://www.affectiva.jp/affectiva-topics/bennese_ks4c



5. 感情分析AIを活用する際の注意点

 

感情分析AIを活用する際には、データやモデル開発においていくつか注意点があります。以下では、感情分析AIを活用する際の注意点を紹介します。

 

データのプライバシーを配慮する

感情分析では個人のデータを取り扱うため、データの収集や利用に際して、プライバシー保護に十分な配慮が必要です。

感情分析AIが取得するデータには、個人の感情や行動に関わるセンシティブな情報が含まれることが多く、不適切に使用した場合にはプライバシーの侵害につながるリスクがあります。

そのため、感情分析を導入する際には、データの収集・保存・利用において厳格な管理が必要です。例えば、データの匿名化や、収集したデータを必要な範囲内に限定して使用するポリシーの明示が挙げられます。

感情分析に利用するデータの取り扱いにおいては、法律や規制のもとデータプライバシー保護を徹底することが必要です。

データ収集に関する注意点についてはこちらの記事も併せてご覧ください。


学習データの質の確保

感情分析AIの精度を高めるためには、学習データの質を確保することが不可欠です。感情の動きは、生まれ育った文化や環境、教育、また、写真撮影時の状況などが複雑に相互作用します。それで、同じように見える筋肉の動きでも真逆の感情を内包する場合も少なくありません。

そのため、多様なデータを用いて学習させることで、AIがより幅広い感情や表情を理解できるようにすることが重要です。

また、データのアノテーションの質も、モデルの精度に直接影響するため重要です。アノテーションが不正確な場合や曖昧な場合には、AIは誤ったパターンを学習し、分析精度が低くなります。そのため、専門的な知識を持つアノテーターによる作業が推奨されます。

 

 

 

誤認識への対応

感情分析AIは万能ではなく、誤認識が発生する場合もあります。特に皮肉やジョークといった文脈に依存する表現は、AIでなくても正確に理解するのが難しく、誤った分析結果につながることが少なくありません。

こうした誤認識を防ぐためには、テキストデータ、音声や画像、生体情報を組み合わせて感情を分析する「マルチモーダル分析」が有効です。複数のデータソースを活用することで、より正確な感情分析が可能になり、誤認識のリスクを減らせます。

また、感情分析AIの精度を維持・向上させるためには、定期的なメンテナンスや学習データの更新が欠かせません。新たな言い回しや表現が増える中で、データの更新を怠ると、AIの判断が時代に対して不相応になることや誤認識が増えるリスクもあります。

 

業界特化モデルの必要性

感情分析AIを効果的に活用するためには、対象となる業界や分野に特化したモデルを構築することも一つの方法です。業界特化モデルであれば、一般的な感情分析モデルでは捉えきれない、業界特有の表現や専門用語を正確に理解し、文化的な要素や微妙なニュアンスを考慮できます。

特に、医療や金融をはじめ専門性の高い分野では、固有の言葉や表現が多く使われており、一般的なモデルでは正確な分析が難しい傾向にあります。

業界に特化するための対応策としては、対象業界の専門家をアノテーションプロセスに参加させることが効果的です。専門家の知識を活用することで、業界特有の表現や文脈を適切に理解し、解釈精度を向上できます。


6. まとめ


企業にとって、顧客や従業員の感情を迅速に把握し、適切な対応を行うことは、顧客満足度の向上や職場環境の改善に大きく寄与します。

そこで、感情分析AIを活用すれば、リアルタイムで顧客や従業員の感情の変化を捉えることができ、トラブルの早期発見やサービスの質向上が可能となります。

感情分析AIは企業が顧客や従業員と信頼関係を築き、より良いサービス提供や職場環境づくりを行うための有力なツールとして、今後ますます重要性を高めていくでしょう。