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自然言語処理とは?必要なアノテーション種類・仕組み・作業流れを徹底解説!

作成者: 株式会社Nextremer|Jun 3, 2024 2:36:00 AM

 


2022年後半から怒涛のように押し寄せた生成AIブームで、「ChatGPT」を筆頭に「Bard」や「Claude」など自然言語を操るAIが身近になりました。しかし、自然言語がどのようにAIによって理解され、生成されているかを理解している方は少ないのではないでしょうか。

本記事では、自然言語処理(NLP)の活用例や、自然言語処理モデルのデータの作り方を解説します。特に、データを作る工程である「アノテーション」がどのように行われているかを詳しく解説します。

自然言語処理の仕組みやビジネスへの活用例が知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

 

【目次】

  1. 自然言語処理とは?
  2. 言語アノテーションの種類
  3. 言語アノテーションは自動ツールで作業可能?
  4. 言語アノテーションを行う際の注意点
  5. 自然言語処理の活用例・できること
  6. まとめ

 

 

1. 自然言語処理とは?


自然言語処理(NLP)とは、私たちが普段使っている日本語や英語などの自然言語をコンピューターが処理する技術のことです。生成AIの火つけ役とも言われる「ChatGPT」は、大規模言語モデル(LLM)が使われており、人間の言葉を理解し、自然に応答する能力を持ちます。

自然言語処理AIは単独でも有効活用できる技術ですが、画像生成AIや音声解析AIなどと組み合わせることにより、企業のカスタマーサポート、市場分析、製品開発において新たな価値の創出が期待されています。例えば、ChatGPTは、顧客からの問い合わせに対して即座に反応し、適切な解答を提供することができます。

さらに、画像生成AIとの統合により、テキストベースの情報から直接的な視覚的コンテンツを生成することが可能になり、例えば広告やプレゼンテーションにおいて革新的な表現が実現します。

 

自然言語処理において言語アノテーションが必要な理由

言語アノテーションは、自然言語処理において重要なプロセスです。教師あり学習を用いる場合、AIモデルに正しい答えを教えるためには、テキストデータに「正解」のラベルを付ける必要があります。これが言語アノテーションの役割です。

しかし、言語アノテーションは単に単語にラベルを付けるだけでは不十分です。自然言語を完全に理解するためには、文脈や感情、意図などの要素も考慮に入れる必要があります。

例えば、「すみません」という日本語は、シチュエーションに応じて謝罪、感謝、呼びかけ、非難、挨拶など複数の意味を帯びます。そのため、言語アノテーションでは、単語の意味を正確にモデルに伝えるために、これらの文脈やニュアンスを含めた複雑な情報を提供する必要があるのです。

言語アノテーションにより、AIモデルは単語の意味だけでなく、その使われ方や文脈を学び、より正確かつ洗練された自然言語理解を実現します。

 

 

2. 言語アノテーションの種類


自然言語を理解するには、辞書的な単語の意味のほか、意図や文脈、感情などを正確に読み取る必要があります。これらを読み取るために、以下のような言語アノテーションが行われます。

  • セマンティックアノテーション
  • エンティティアノテーション
  • センチメントアノテーション
  • インテント(意図)アノテーション
  • オントロジーの構築
  • 文節チャンキング

 

それぞれについて解説します。

・セマンティックアノテーション(意味的アノテーション)

セマンティックアノテーションでは、単語一つ一つに具体的な意味を割り当て、単語間の関係を識別します。AIが単語の意味と関連性を理解することで、文章を正しく理解できるようになります。

例えば、「蝶」という単語は、生物学的なコンテキストでは昆虫を指しますが、芸術的なコンテキストでは美や変化の象徴として使われることがありますし、「夜の蝶」といった単語のつながりでは女性を指すこともあります。

セマンティックアノテーションは、テキスト全体の文脈を考慮に入れます。これにより、同じ単語でも異なる文脈で異なる意味を持つことが理解できます。

また、テキストの作者が何を伝えようとしているか、どのような感情や意図を持っているかを理解することもセマンティックアノテーションの一部です。例えば、「すばらしい!」という表現でも、文脈によっては皮肉や批判を意味することもあります。

セマンティックアノテーションは、AIが人間の言葉をより深く理解し、それ に基づいてより人間らしい反応や解析を行うことを可能にします。


・エンティティアノテーション(固有表現アノテーション)

エンティティアノテーションは、文章内にある特定の実体(エンティティ)を識別し、人名や地名、企業名などにカテゴライズする作業です。

例えば、「Appleが新しい製品を発表」という文章では、「Apple」を企業名として識別することが重要です。これにより、AIは「Apple」という単語の文脈上の意味を正しく理解し、適切な情報を抽出することができます。

エンティティアノテーションにより、AIはそれぞれの単語のカテゴリーを認識できるため文章の意図を正確に読み取れるようになります。エンティティアノテーションを行えば、AIが誤った解釈をする可能性が低くなります。


・センチメントアノテーション

センチメントアノテーションは、テキスト内に含まれる感情をラベル付けする作業です。一般的には、以下の3段階で感情を判断します。

  • ポジティブ(肯定的)
  • ニュートラル(中立的)
  • ネガティブ(否定的)

例えば顧客のフィードバックを分析する際にその感情的なニュアンスを捉えることができます。

感情をアノテーションしてモデルに学習させることで、話し手や文章の書き手がどのような状況にいるかを判断できるようになります。感情に応じた単語の使用傾向も学習され、より細やかな感情分析が可能になります。抱えている感情により、使われる単語の傾向は異なるという特徴も活用されています。


・インテントアノテーション(意図アノテーション)

インテントアノテーションでは、テキストの背後にある意図や目的をラベル付けします。たとえ同じ単語が使われていても、文章全体の意図が異なることは多くあります。

例えば、顧客サポートのチャットボットは、顧客の質問や要求に基づいて適切な回答を生成するために、インテントアノテーションに依存しています。

意図によって使われる単語や文法は異なるため、その部分をアノテーションすることでAIモデルが意図を抽出できるようになります。テキストの感情的なトーンや意図を正確に捉え、より自然で人間に近い対話や分析を行うことが可能になります。

 

オントロジー構築

オントロジーの構築とは、単語と単語の間に関係性を持たせることです。関連性の一例として英文法での説明になりますが「is-a」「part-of」「attribute-of」などが挙げられます。

関係性 意味
is-a あるものが別のものの種類である スズメは鳥である(スズメ is-a 鳥)
part-of あるものが別のものの一部である ホイールは車の一部である(ホイール part-of 車)
attribute-of あるものが特定の属性を持つ この車は赤い色をしている(赤色 attribute-of 車)

文章中に何らかの関係性を持つ単語と単語があれば、それらを結びつけます。オントロジーの構築をすることで、単語と単語の関係性を掴めるため、モデルが文章の意味をより深く理解できるようになります。

 

文節チャンキング

文節チャンキングは、名詞や形容詞などの品詞をラベル付けする作業です。品詞の解釈を誤ると、文章全体の意味が通らなくなってしまうこともあります。
例えば、「大きい犬が走っている」という文では、「大きい」を形容詞、「犬」を名詞として区別することが重要です。
文節チャンキングを行うことで、AIは品詞を正しく判断し、文章の理解力を向上させることができます。

 

 

 

3. 言語アノテーションは自動ツールで作業可能?


自然言語処理ができるモデルを構築するには、多くの場合言語アノテーションが必要になります。しかし、アノテーションは非常に手間のかかる作業です。アノテーションに労力を割くことができない場合は、自動ツールでアノテーションできるのでは?と多くの方が考えるかもしれません。

しかし、言語アノテーションのプロセスは、特にその精度と複雑さのため、完全に自動化することが困難です。言語には、皮肉、比喩、慣用句など、文脈に深く依存する表現が豊富に含まれています。これらの表現を正確に理解しアノテーションするには、文脈の深い理解が必要であり、これは現時点の自動化技術では完全には再現できません。

また、言語は常に進化していますし、文化的背景によっても大きく変わります。新しい単語や表現が生まれるため、アノテーション作業は人の介入により継続的に更新される必要があります。そして、特定の文化圏や地域に特有の表現を理解するには、その文化に精通した人間の知識が必要です。

自動ツールはアノテーション作業の支援としては有用ですが、現段階ではこれらの作業を完全に置き換えることはできません。

アノテーションの自動化が難しい理由について、以下の記事で詳しく解説しています。
アノテーションはなぜ自動化が難しいのか?手動アノテーションが必要なケースとは?

 

 


4. 言語アノテーションを行う際の注意点


言語アノテーションを行う際は、以下の点に注意してください。

  • データはなるべく多めに用意する
  • 偏りないアノテーションデータを収集する
  • 専門分野に合ったアノテーターをアサインする

それぞれについて解説します。


・データはなるべく多めに用意する

高精度な自然言語処理モデルを構築するには、学習データの量と質を確保する必要があります。どちらも重要な要素ですが、そもそも量が少なければ品質を上げられないため、データは多めに確保するようにしましょう。

データが豊富であればあるほど、モデルはより多様な話題や表現に対応できるようになります。したがって、データセットは可能な限り多くのサンプルを含むべきです。自然言語のデータが少なければ、狭い話題にしか対応できないモデルとなってしまいます。

データセットには、異なる文体、ジャンル、話題が含まれていることが望ましいです。これにより、モデルはさまざまな文脈や表現に対応する能力を身につけます。できるだけ多くのデータを学習させて、汎用性の高いモデルを目指しましょう。


・偏りないアノテーションデータを収集する

アノテーションデータに偏りがあると、それに基づいて訓練されたモデルも偏った結果を出す可能性があります。したがって、異なる文脈、背景、感情を持つデータを均等に含めることが重要です。

偏った学習により構築されたモデルは精度が低くなりやすいため、バランスよくデータを収集することが重要です。

とはいえ、膨大なデータをバランスよく集めるのは非常に難しいです。データに知見がない場合は、その後の作業を無駄にしないためにも、アノテーションを行う前に専門家に相談するとよいでしょう。

アノテーションデータ収集依頼時の注意点を以下の記事にまとめています。
アノテーションデータ収集依頼時の注意点

 

・専門分野に合ったアノテーション作業者をアサインする

難しい用語が使われている文章をアノテーションする際は、専門分野に知見のある人員にアノテーションを依頼しましょう。用語に詳しくない人員がアノテーションを行った場合、見落としが発生するリスクが上がるうえに、知識をつけるための時間が必要になります。

専門分野にマッチしたアノテーターを多く準備するのが難しい場合は、マニュアルを作ったりダブルチェック体制を構築したりして、ミスを防ぎましょう。



 

5. 自然言語処理の活用例・できること


自然言語処理を活用すると、以下のようなことができるようになります。

  • 自然言語生成
  • チャットボット
  • 翻訳

それぞれについて解説します。

 

・自然言語生成

自然言語処理を活用すれば、新たな自然言語を生成することができます。ChatGPTは自然言語処理の技術を活用して開発された生成AIです。

自然言語生成を活用すれば、自然言語を扱う業務の省力化や自動化が実現します。例えば、記事やレポートの執筆が自動化できます。また、プログラミングコードを学習しているモデルは、プログラミングも可能です。

 

・チャットボット

自然言語処理を活用することで、チャットボットなどの会話サービスの開発が可能です。すでに、チャットボットを導入している行政や企業のホームページは多数あります。

また、音声認識技術を組み合わせれば、音声でやりとりすることもできます。音声で会話ができるボイスボットは、すでに飲食店やホテルなどで実用化されています。また、寄り添い型対話システムとして、被介護者のサポートをする製品も開発されています。


・翻訳

自然言語処理を活用すれば、他言語への翻訳が可能です。チャットボットやボイスボットに翻訳機能を搭載すれば外国から来た観光客にも対応できます。また、ただ単に翻訳するだけでなく、その文章を要約してもらうことも可能です。

さらに学習データ次第では、自然言語の翻訳だけでなく、プログラミングコードを別の言語に翻訳することもできます。このように自然言語処理は、アイデア次第で幅広い業種で活用できます。



 

6. まとめ

教師データはAIにとって欠かせないものであり、その精度の高さがAIの精度の高さにつながります。質の高い教師データを作るためには、高い技術のアノテーションや専門知識の多さ、しっかりとした管理体制といった様々な要素があります。

アノテーション作業は、大量のデータをタグ付けするといった、一見すると単純な作業に見えるため、個人のクラウドワーカーや海外企業に委託するようなオフショアに依頼して人件費を安く抑える場合もあります。しかし、そのような場合、作業内容やルールを決めても、作業者が理解できなかったり知識がないために精度が低いアノテーションになったりするなどの問題が発生し、目的の沿った品質の教師データを得られなくなってしまいます。技術の高い作業者だけでなく、それを管理し、目的や納期を達成できる組織づくりも必要になります。

また、教師データを作成する上で、アノテーション技術が高く品質管理の体制が整っていたとしてもヒューマンエラーを完全になくすことは簡単ではありません。エラーが発生した時に的確に素早く対応していけば、信頼性のあるデータが作りあげられます。

このような要素をクリアすることで、質の高い教師データを作り、精度の高いAIを作ることができます。